広田弘毅 服部龍二

広田弘毅―「悲劇の宰相」の実像 (中公新書)

広田弘毅―「悲劇の宰相」の実像 (中公新書)

「『悲劇の宰相』の実像」という副題に表れるように、広田は決して責任がなかったのに処刑されたのではなく(著者も絞首刑は重すぎるとしているが)、首相として近衛内閣の外相として、日中交渉に熱意を失い南京大虐殺閣議に提起せず、軍事費の支出に賛成している。その背景にポピュリズムがあったと著者は分析している。微妙で困難な問題をはらむ中国問題にポピュリズムが絡んだところに、責任感と当事者意識の欠如した指導者(広田だが近衛が最たるものだろう、実は)を戴いた悲劇、だったのだ。