東京島 桐野夏生

東京島

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こういったじわじわの危機には、女性は強い、ということなのだろうか。会田雄次の『アーロン収容所』を思い出す。銃弾が飛び交う戦場で活躍したり、敵と対峙する緊張状態で頼りになったり、捕虜収容所の中でうまく立ち回ったり、それぞれ状況の異なる「危機」の場面で、ある危機では抜群の人間が、別の危機では何の役にも立たなかったりする。4番目の「夫」GMは、平時の有能な指導者、という意味合いか。逆に隆は、船が難破するという状況では頼りになっても、その後は清子に頼りっぱなしだった。ワタナベのくだりは、実は小気味よく、さらに後段の意外な展開はさすがだ。