輿論と世論 佐藤卓己

輿論と世論―日本的民意の系譜学 (新潮選書)

輿論と世論―日本的民意の系譜学 (新潮選書)

かつて明確に区分されていた「輿論」と「世論」は、漢字制限によって、「世論」に統一され意味が不明となり、現在の政治の無責任化につながっている、というkとなのだろう。輿論は「意見」であり、世論は「気分」である。世論は図ることができるが、それをどのように輿論としていくかが、マスコミの使命である。世論調査と銘打って、輿論であるかのような結果を誘導することではない。樺俊雄の「輿論」と美智子の「世論」の対立、そして美智子の死がもたらした俊雄の「輿論」の変質を論じた「『声なき声』の街頭公共性」、大学紛争時、実は多くの学生はノンポリで、さらの外側に集団就職に象徴される大学とは無縁の若者がいたことを改めて指摘する「全共闘的世論のゆくえ」など、大変読み応えがある。