庶民たちの平安京 繁田信一

庶民たちの平安京 (角川選書)

庶民たちの平安京 (角川選書)

古代、文字は貴族層のものだから庶民のことはわからない、という先入観を外し、平安京の庶民の大部分は貴族や朝廷に仕えているものであり、その言動が貴族の日記や紙背文書に残っているとあれば、十分に考察可能だ。そうして描き出された庶民像のいきいきとしたこと。白馬節会や五節舞などに乱入する庶民は、貴族たちの管理不行き届きでもある。事があれば主家の保護を期待できる一方、処分にも服さなければならない従者。さまざま叙述の中で、牛飼童についての分析はとても魅力的だ。一生童形で苗字を許されず、丸を付けて呼ばれるが、同業者の連帯があり、また運送業を(役得として主家の牛や車を使って)営んでいたことらしいことなどは、新しい知識でうれしい。