ファミリーポートレイト 桜庭一樹

ファミリーポートレイト

ファミリーポートレイト

家族写真というと、幸せの象徴だろう。ところが、すさまじい半生を過ごした主人公にとって、その持つ意味はまったく異なる。幼くして母に連れられて逃亡生活を送りながらDVを受け続ける。唯一の逃避の場が読書だった。そして目の前で自殺した母親と一体化し、高校・文壇バーでの体験を経て作家としてデビュー。今度は、いつの間にか自らが傷つける側に回っていると感じて失踪。そして復活。疾風怒濤という言葉がぴったりの小説だ。最後に「朝の世界」の恋人とよりをもどし、「孤独な夜に忍び込む」資格を持つ作家の生き方が、平穏な幸せと両立しうることを示唆する。ラストも秀逸。