この胸に深々と突き刺さる矢を抜け上・下 白石一文

ガンとなった敏腕編集者が放つ与党幹部のスキャンダル。格差を嫌悪し、超常現象を体験する主人公の造型に「不幸の瓶詰」であるがんセンターの存在がある。家族とも社内の派閥抗争からも超越する主人公にささやきかける失った息子の声。正直、読み進めるのに困惑感を伴わないとは言わない。しかし、主人公の筋を通した生き方には、好感が持てる。