憲法第9条2項があるからこそ、
アメリカにどこまでも引きずられるということを免れてきた、という立場の著者が、現在の状況に危機感を募らせる。
改憲派であった
小林節教授の、
護憲派との共闘に見られるように、近代
立憲主義への無理解と国家・権力への無邪気ともいえる緊張感のなさに対する焦りも強く感じられる。市民が国家に対し緊張感をもって対峙する存在と意識していないのだ。では、どうする。一方で、明確な
憲法違反である
自衛隊の存在が遵法意識を大きく損なっていることは確かだし。著者のいう、対米従属とそのなかでなんとか誇りを維持しようとするあがきのようなものが、
靖国であり日の丸・
君が代であろう。「
アメリカと価値観を同じくする同盟国」にとって。「おわりに」での
岡崎久彦の著述に対する痛烈な批判、これが、著者と岡崎らの立場との絶望的ともいえる距離をあらわしている。