近代の胎動 藤田覚・編

近代の胎動 (日本の時代史)

近代の胎動 (日本の時代史)

▽「地域社会の変容」。藤沢宿清浄光寺と西村の百姓の訴訟騒ぎを材料に、「強情者」がネットワークを持って争っていることを述べる。▽「学問と教育の発展」。異国の脅威はなんといっても耶蘇教であり、死後安心の世界を説く平田篤胤国学も、同じく死後安心論を「父子一体」、忠孝に結び付けて論じる後期水戸学も同じ点がある。▽「芸能興行の世界」。大御所時代は、京阪から江戸へという文化の東漸だけでなく、「江戸」ブランドの重み、仙台と盛岡との格差、受領名の権威など、文化の拡散や序列の先鋭といった方がよい。▽「江戸庶民の暮らしと名奉行」。天保の改革のテーマ、江戸の人口を減らすために、水野忠邦は、女髪結いや屋台店を取り締まり、その日暮らしの者が居着きにくい環境をつくろうとしたのに対し、遠山景元江戸町奉行は、生活の糧であることから取り締まりを緩めようとした。