江戸図屏風の謎を解く 黒田日出男

江戸図屏風の謎を解く (角川選書)

江戸図屏風の謎を解く (角川選書)

▽明暦の大火(1657年)以前の江戸を描いた「寛永江戸図」がいつの版行か。誤刻(「真田」を「実田」など)などから、寛永9年に近い時期と判定。▽歴博本「江戸図屏風」は、松平信綱が家光の御成りに備えてつくらせたもの。▽「江戸天下祭図屏風」は、慶安事件と明暦の大火で幕府に疑いをかけられた徳川頼宣が、帰国を許された機に妻に贈ったものであることを、読み解いていく。紀州藩屋敷が目立つ配置となり、描かれた屋敷も尾張・水戸・越前などを除けば、慶安事件の関係者であり、紀州藩屋敷の天水桶の描写から、大火を意識していることを指摘している。そしてこの屏風が日蓮宗の本圀寺に伝わったことは、熱心な日蓮宗信者だった頼宣の妻(加藤清正の娘)から贈られたものと解する。絵画を史料として読み込む著者の論理展開に興味を尽きさせず読み切った。