ラーメンと愛国 速水健朗

ラーメンと愛国 (講談社現代新書)

ラーメンと愛国 (講談社現代新書)

ラーメンは、ファミレス(「ガスト」)やハンバーガー(「マクドナルド」)、牛丼(「吉野家」など)といった食のデフレから脱却し、値上げにも成功した食だと。なぜか。安藤百福の「工業製品としてのラーメン」という発想が大ヒットにつながったこと、受験勉強の深夜食として団塊の世代の共通体験の食べ物となったこと。ここまでは、ほかの料理のたどったデフレへの道は免れまいと思ったら。札幌ラーメンは、もともとは味噌でなかったのが、一斉に変わったこと、すなわちご当地ラーメンは、郷土料理ではなく、かえって食の均一化の結果であったこと、また喜多方ラーメンのように観光を目的に作りだされたものであること。スローフードの流れと作務衣姿の「ご当人ラーメン」が増えてきたこととの関係。「麺屋」などラーメンを「隠す」店名と、白と赤という伝統的な中華のイメージと異なる黒や青、紺といった色使い。反中国的な首長の政治目的に利用される(批判しているわけではなさそうだ)ラーメン。各方面から戦後と現在の日本人の文化や思考、経済まで多方面から観察している。