刑務所の経済学 中島隆信

刑務所の経済学

刑務所の経済学

刑罰は正義の問題、被害者の感情の問題もあるから、経済合理性だけで割り切るわけにはいかない。しかし「採算性」を無視しては長続きしない。たしかに、犯罪者を捕らえて裁判にかけ、刑務所に送れば一丁上がり、ではない。刑務所に収容するにはコストがかかる。そして有期刑は必ず社会に戻ってくる。そのとき、受け入れる場所がなければ、再び罪を犯して社会に不安を損害をもたらし、またコストのかかる刑務所収容となる。刑が更生に至る前に満了すれば出所するし、更生に至り犯罪の再犯可能性も(加齢などで)なくなっても刑が終わらなければ(仮釈放が認められなければ)釈放されない。更生という面で、あまりに不合理にできているようだ、現在の制度は。「居場所」という意味で、犯罪者は障害者と同じような立場にある。そして実際に刑務所は高齢者と障害者の割合が高くなっているのだ。障害者の社会参加のノウハウを出所者にも、という視点は大切だろうし、何より、保護監察制度が仮釈放が対象で満期出所即ち高齢で犯罪傾向が強く社会から隔離された期間が長い出所者が放り出されているという現状は、なんとかしなくてはならないだろう。更生が目的の少年犯罪者への処遇が、一つの参考になるのではないかとも感じた。いずれにしても、刑務官をはじめとする公務員のモチベーションにかかっているわけで、いかに高めていくべきか、いたずらに批判するばかりではなく、考えていかなければならない。著者の言うように、社会への信頼があれば「赦し」も生じやすく、犯罪も少ない社会になるのだろうから。