障害者の経済学 中島隆信

障害者の経済学

障害者の経済学

著者は障害児の親という「当事者」である。障害者の福祉という保護に慣れ切った自覚、親の「甘え」、特別支援学校という「ぬるま湯」、障害者自立支援法で発想の大転換を迫られる施設など、「合理的」な経済学の視点から分析している。「比較優位」という観点から、障害者にも得意な分野があれば締め出さず仕事を与えることが社会的に最適だ、という。「比較優位」という考え方は、自分としては、ともすれば劣位者に手入れレベルの仕事を押し付けるものと警戒しているのだが、そもそも仕事をとれないという障害者の場合、社会に迎え入れる考え方として十分ありだ。障害者に対する無理解は、障害者の姿が社会に見えないことにあるわけだが、特別支援学校のスター(比較的軽度の若い障害者で本来ならば最も社会に適合しやすいはず)が障害の自覚が乏しいために不適合を起こしたり、作業所が能力のある障害者を「手放す」ことに難色を示したりと、障害者の自立は一筋縄ではいかないことも、よくわかった。