受領 森田悌

受領 (1978年) (教育社歴史新書―日本史〈10〉)

受領 (1978年) (教育社歴史新書―日本史〈10〉)

▽貪欲な受領の代名詞でもある藤原元命だが、著者の分析によると、全く非法に収奪したわけではなく、「租穀率法」は段別三斗のままで検田により損田を低く見積もることで増徴したとする。▽三善清行大江匡衡という、律令末期と王朝期のふたりの学者を比較し、律令の体制が崩れて国司個人の徳目が関係なくなる「請作」という名支配下では、学問は立身の手段としか位置づけられなくなる。多少、負い目はあっても。▽受領の個人的な郎党は、たとえ数は少なくても機動的な武力となり、それが荘園の牽制ともなり、また在庁官人との対立から苛政上訴にもつながったが、受領が在国しなくなり留守所が在庁官人の手に落ちると、受領は没落していく。