家宝の行方 小田部雄次

冒頭、「吉備大臣入唐絵巻」が昭和7年に海外に流出したエピソードから始まるが、特に、当時の美術市場が茶道具に偏っていたことを批判しているわけではない。「歴史の発展がその発展に適合しない存在を淘汰する」なか、華族から戦争で富を得た財界人へ、そして敗戦で美術館などへと、美術品の移動を通して、華族の没落、富の偏在を見つめる。好著だと思う。売り立ての一覧など資料的な羅列が、やや読みにくいか。

家宝の行方―美術品が語る名家の明治・大正・昭和

家宝の行方―美術品が語る名家の明治・大正・昭和