帰ってきたマルタン・ゲール ナタリー・Z・デーヴィス

夫・マルタンそっくりの男(アンリ・ド・テュル)が10年以上経って戻ってくる。夫はあまり気立てのよい男ではなかったが、陽気で楽しい男になっていた。妻(ベルトランド)は、偽者であることを果たして知っていたのか。著者は、知っていたであろう、として自立した女性として妻を描く。そして、戻って3年後?叔父を訴えなければそのまま過ごせたか、という問題については、「気づまりと不安定感と警戒心とが村と親族関係のなかで蔓延していったであろう」、つまり逆にいえば、村人もなんとなく偽者とわかりつつ受け入れていた、ということであろうか。なりすましについて、テュルがマルタンと知り合っていたかどうか、著者は断定していないが(戦友は無理がある)、知識を仕入れるに知り合っている必要があるだろう。それと、最初に会ったふたりからの情報による周りの思い込みが、成りすましを可能にさせたのだろうか。関係者の年表のようなものがあれば、わかりやすいと思った。またこの事件そのものと宗教改革は、あまり関係ないように思うが。

帰ってきたマルタン・ゲール―16世紀フランスのにせ亭主騒動 (平凡社ライブラリー)

帰ってきたマルタン・ゲール―16世紀フランスのにせ亭主騒動 (平凡社ライブラリー)