黄金太閤 山室恭子

秀吉政権を、黄金の魅力のパフォーマンスで庶民の人気を高め刀狩りや検地など庶民生活の根底を覆す改革を実行できたとみて(他人の懐をあてにした北野大茶会はだめだったが、金賦りや越中攻め九州動座など)、唐入りも全国政権維持のためのパフォーマンス(大唐も支配しているぞ)とみる。本音と建て前の使い分けで、秀吉は実は明の国書の中身も知っていたうえで和睦しようとしていたが、震災で大仏や屋敷が壊れ、興行として失敗すると見て破棄に動いた(なお行長は降表の偽造前にも懐良親王の書をもとに偽造の前科あり)。その後善光寺如来の動座を行い、そのための「鼻供養」を行ったが受けなかった。平成4年の本だが、秀吉政権がパフォーマンスに走る(その実落としどころはありそうな)小泉政権にやや通じるところを感じさせる。