聖餐 石原慎太郎

聖餐 (幻冬舎文庫)

聖餐 (幻冬舎文庫)

なんというか。表題作は、リアリティーありありで、そして犯罪の動機というのは、犯罪に至る経緯というのは、案外こんなことなのかもしれない、と思わせる。どれだけ素晴らしいのか正直、判断がつきかねるのだが。そのほかの収録では、「沢より還る」が文句なくすばらしい。陳腐な物言いだが、大自然の中で生命の危機に瀕しての妙な落ち着き。わかるような気がする、くらいのリアリティー。「海にはすべて」の肺が破裂するかの感触。「山からの声」(これは断り書きからすると元ネタがあるようだが)での神秘。神秘は、このへんにしておかないと、他の作品は鼻についてどうも、か。