東京バンドワゴン 小路幸也

東京バンドワゴン (1)

東京バンドワゴン (1)

こういうものを読むと、しみじみ読書の喜びを感じる。最初、登場人物の多さに、ついていけるかしらんと感じたが全くの杞憂。春夏秋冬の4編は起承転結も意識していると思うが、傑作はなんといっても「夏・お嫁さんはなぜ泣くの」だ。「春・百科事典はなぜ消える」で惹きつけた読者をさらに圧倒する。その分「秋・犬とネズミとブローチと」は、転を意識しすぎたのかやや空回りの感がある(「夏」の後だからそう感じるだけかもしれない)。そして「冬・愛こそすべて」で、本について触れた家訓の通り「収まるところに収ま」ったという読後感を残して終わる。いいねえ。続編をぜひ読みたいような、このまま余韻を壊してほしくないような、そんな作品。