偽りの大化改新 中村修也

偽りの大化改新 (講談社現代新書)

偽りの大化改新 (講談社現代新書)

乙巳の変の首謀者は中大兄(天智)ではなく、皇位についた軽(孝徳)だとする。我が子可愛さから山背大兄王を殺した皇極、その結果、蘇我入鹿さえ倒せば政権がひっくり返るという状況が生じ、クーデターで中大兄の優位(現大王の子)という点は一気に崩れる。そもそも中大兄は孝徳の「皇太子」になどならなかったし(「皇太子」という立場で政治力を振るうという考え方を不可能と退けている)、だからこそ孝徳の死後も大王位石川麻呂の悲劇も中大兄との結びつきを強めたことによる孝徳の仕業と。有間王子も重祚した斉明が殺させたと。▽そしてこのような怜悧・陰湿・冷酷な日本書紀の天智像は、孝徳と同じく簒奪王朝だった天武が正統性のために編んだという日本書紀の性格を考えれば容易に理解できると。なるほど。