今夜は心だけ抱いて 唯川恵

今夜は心だけ抱いて

今夜は心だけ抱いて

47歳の母親と17歳の女子高生の心と体が入れ替わる、というと聞いたような、なんともばかばかしく現実感のない設定、であるはずなのに、実に愉しくおもしろく読むことができた。実感できるのは、体は心の単なる入れものではなく、体によって心の動きは大きく影響されるということ。そして若いというだけが単純にすばらしいわけではないこと。小人閑居して不善をなす。さまざまなくだらないことに気を使うのだ、他に使うところがないから。成熟した魅力を手に入れるために背景として不可欠な記憶を記憶喪失を装うという形でオチをつけたところは、果たしてよかったのかどうか。