ニューヨーク地下共和国 上・下 梁石日

ニューヨーク地下共和国(上)

ニューヨーク地下共和国(上)

ニューヨーク地下共和国(下)

ニューヨーク地下共和国(下)

おそらくアメリカのどこでもいつでも発生している人種差別意識に基づく警官の発砲から始まって、過飽和状態が微かな刺激で結晶するように9.11テロ(決して「微か」ではないが)をきっかけに転がり落ちていくアメリカ。自由の女神や橋での爆発などのフィクションが現実に起きたテロのように思わせるプロット(それも9.11が作り物以上に非現実的だからだ!)。もちろん、ゼムに秘密事項を洩らすウラディミールの心情など理解を超えているし、ルーベンスが何者だったのか、なぜジョージが「正体」を知って殺せたのか、そもそもカウフマンに調査を命じたDMA証券の意図は何か、疑問を放りっ放しで破綻だらけではあり、ラストの余りにも呆気ない結末といい、梁石日の一部の作品に見られるような肩透かし感は残る。それでも、ニューヨークの地下に原爆だぜ。