ニッケル・アンド・ダイムド B・エーレンライク

ニッケル・アンド・ダイムド -アメリカ下流社会の現実

ニッケル・アンド・ダイムド -アメリカ下流社会の現実

貧困は失業の結果、怠惰の結果、というなんとはなしの思い込みを打ち砕く本。NHKスペシャルでも放送していたが、フルタイムで働いても生活を維持できないのだ。最初に一定の金がなければ部屋も借りられず、結局割高のモーテルに住むことになる。家賃について、金持ちと貧乏人が競争すれば金持ちが勝つ、すなわち、繁栄が貧乏人を追いつめるという皮肉、誰かが生活できないほどの低賃金で働いているとしたら、自分たちの快適さのためにその人たちの労働に依存しているということであり、「恥」の感情を持つべきだと。ただ、時折のぞく、所詮一時のこと、本来、自分がいる場所はここではない、という意識(それがあるから切り抜けられたのだろうことはよくわかるのだけど)が、どことなく冷たく感じられたのは否定できない。潜入ルポの宿命だろうか。