鯉浄土 村田喜代子

鯉浄土

鯉浄土

老年に差し掛かった身から見た生と死。時に誕生する生命に感嘆し、若さに嫉妬し、ことさら動物と区別する人の傲慢さに静かに抗議する、そんな連作集。夫の病気や娘の出産など、登場人物の名こそ違えどテーマは共通し一連のものとして、前の作品の続きとして読ませる。「庭の鶯」と「力姫」。「薔薇体操」と表題作「鯉浄土」。「残害」がしみじみとよかったが、やはり表題作が出色か。