ダナエ 藤原伊織 

ダナエ

ダナエ

表題作はすらすらと読め、それなりに伏線もあり世界があるのだが、どうも表面的。「まぼろしの虹」は、血のつながらない姉との関係が短いシーンの中でとても魅力的に描かれてはいるのだが、「山根」という人物が登場しない割に重要な位置を占め、その「登場しない」がぶちこわしにしている。効果的なこともある手法なのだろうけど。「水母」。結果的に自分の行動で関係が壊れてしまったかつての愛人のきわめて個人的でかつ深刻な危機。「時代はとっくに終わっている」男の悲哀と覚悟。まずまず。