静かなるドン ショーロホフ 筑摩書房

毎年1回読み返そうと決めたわけで、訳者を代えてみた。だが、やはり第1巻のコサックの暮らし部分は、小説の世界に入り込めていないせいか、冗長に感じる。読み返すたびに感じるのはリストニツキイの最期が締まらない。もう出てこないんじゃないかというくらいで。今回読み返して改めて理解したのは(前回も理解していたのかもしれないが)、グリゴーリイは単純に赤軍と白軍(カデット)の間を行き来したわけではなく、蜂起軍という、白軍とは一線を画し、「ソヴェト賛成、ボリシェヴィキー反対」の集団にいてから、劣勢になり白軍に合流した、というあたりか。左利きを活かした剣法についての描写もこの時期(第3巻第6部37章)である。シトックマン・ブンチューク・ミシカといった共産党員の人物造型が紋切り型という印象は変わらず、である。