民営化で誰が得をするのか 石井陽一

新書384民営化で誰が得をするのか (平凡社新書)

新書384民営化で誰が得をするのか (平凡社新書)

国鉄民営化の目的の一つに社会党の有力な支持基盤であった国労つぶしがあったことはよく知られているが、実は最大の目的であったことを、中曽根が発言している。それほど反響を呼ばなかったのは、その「罪」よりも「功」の方が大きいという世間の判断があったからだろう。本書は、そうした妄断を一刀のもとに切り捨てる。民営化でも並行する民鉄と比べて割高な運賃は変わらず、駅前の一等地を売却している。アメリカのアムトラックが一社で経営していることが日本でできないはずはなく、上場が困難な三島会社の状況を見れば、再統合が筋だろうと。そして郵政民営化は、先輩・お手本であるドイツが銀行を子会社化し、ニュージーランド外資に買収されてしまった銀行部門に代わり、郵便局内に銀行子会社を設立している。最大のデメリットはリストラで、仮に多少の運賃や郵便料金の値下げがあったとしても割に合わない。結局民営化のメリットは、海外進出くらいか。民営化=善の風潮に一石を投じる本だ。