三面記事小説 角田光代

三面記事小説

三面記事小説

さすが、角田光代だ。事件を伝える新聞記事、すなわち日常目にする、ありがちでなおかつどこか遠い他人ごとに潜む物語。あこがれ、悪意、裏切り。一作目の「愛の巣」もよかったが、どちらかというとありきたりかもしれない。2作目の「ゆうべの花火」が傑作。田口は、おそらくこれまで恋愛関係で優位に立ったことがなく、初めて優位に立った相手に徹底的に嗜虐的になったのではないか。弱者こそが弱者に対して最も残酷になれるのかもしれない。最後の「光の川」の痴呆(今は認知症か。ボケから名前だけが変わっていく)の母親の描写は迫力があり、切ない。