アレクサンドルⅡ世暗殺 上・下 ラジンスキー

アレクサンドル2世暗殺〈上〉ロシア・テロリズムの胎動

アレクサンドル2世暗殺〈上〉ロシア・テロリズムの胎動

アレクサンドル2世暗殺 下 (2)

アレクサンドル2世暗殺 下 (2)

さほどなじみ深いというわけでもない事柄の割には迫力を持ってすらすらと読めた。皇帝専制という体制がかえって皇帝さえ倒せば、という、改革に対する危機感を共有する反動派・革命派双方の思惑が合致した、ということだろうか。近衛兵の反乱を抑え込むことから始まったニコライ?世の強権政治が、改革に踏み切ったとたんにタガがはずれて暗殺が企てられ、打つ手打つ手が双方の反発を買っていく。そして公女への恋と皇后の死、それに伴う皇太子の危機感と、秘密警察のサボタージュの背景は十分だ。ドストエフスキーの晩年の住まいがテロリストのアジトの隣で、死直前のドストエフスキーの行動とテロリスト逮捕の時間的符合は、推測の域を出ないとはいえ、『カラマーゾフの兄弟』続編の構想を絡め、十分に説得力がある。