愚行の世界史 バーバラ・タックマン

愚行の世界史―トロイアからヴェトナムまで

愚行の世界史―トロイアからヴェトナムまで

トロイアの木馬、プロテスタントの分離を生んだ法王庁の腐敗、アメリカ独立の原因となったイギリスの失政、そしてアメリカのベトナム戦争を取り上げている。▽アメリカ独立では、イギリス議会の、権利はあっても行使すべきではない、ということを理解していなかったこと、面子のために徴収のために税収よりも莫大な費用のかかる印紙税や茶税に執着したこと、ひとえにアメリカを失えばイギリスは小国に転落するとの錯覚にあったことを挙げる。▽そしてベトナム戦争では、同様にベトナムを失えば東南アジアはおろか西太平洋も失いサンフランシスコまで後退する、という錯覚、植民地支配を続けようというフランス人とは違い、自由の理念をもたらす自分たちは嫌われないという驕り、反共のベトナム政府という虚構にすがったこと、都合の悪い事実からは耳をそらそうという傾向(「事実で私を混乱させないで」)、そして何より、印象的なのは、「主要な政策は事実についての情報ではなく、判断で決まる」という一節である。政府は確かに最も多くの情報と知識を持っているかもしれない。「人々を責任ある立場から解放してくれる居心地のよい想定だ」。しかし、判断はまた別であることを、歴代のアメリカ大統領は示している。