アジアのなかの日本 田中明彦

アジアのなかの日本 (日本の“現代”)

アジアのなかの日本 (日本の“現代”)

日本のアジア政策は、事実上、冷戦終結から本格化したとはいえ、福田ドクトリンの評価が高い。日中国交正常化のあとの課題として取り組んだ、ということなのだろうか。最終章、「アジアバロメーター」は興味深い。日本がアジアに「良い影響」「どちらかといえば良い影響」を与えているという肯定的な評価が多くのアジアの国で圧倒的であり、しかも中国と韓国では逆に著しく低い。「心と心」の関係は、もっとも近い隣国との間で築けていない。そして、小泉外交の特徴として、首相自身がフォーカスした問題の官邸中心と、関心を寄せない問題での縦割り型意思決定、という点が実に言いえて妙だ。同時多発テロで決然とアメリカ側に立ち、何度も靖国を参拝した小泉外交の功罪は、評価が定まるのはいつのことになるだろうか。いずれにしても、日本のアジア外交に、長期的・戦略的な視点が欠けていたか十分でなかったという印象を強く持った