枢密院議長の日記 佐野眞一

枢密院議長の日記 (講談社現代新書)

枢密院議長の日記 (講談社現代新書)

「倉富は宮中に置かれたテープレコーダーのような男である」。「最後まで書くべきことに軽重もなければ貴賎もなかった」。ひたすら身辺雑記を記し、そこに、当事者の地位の高さゆえに歴史上重要な出来事やその背景を示唆する会話が含まれている。どんな出来事でも、そのことに動じるのではなく、対処の方法を折り目正しく行うことにこだわる倉富は、究極の平常心の持ち主であろう。その日記を通じて、宮中某重大事件、朝鮮王族、白蓮事件、主筋である有馬頼寧の底の浅い「赤い貴族ぶり」など、大正という時代が活写される。いかにも薄っぺらい時代だったという印象も受ける。