感染地図 スティーヴン・ジョンソン

感染地図―歴史を変えた未知の病原体

感染地図―歴史を変えた未知の病原体

コレラがなぜまん延したか、なぜ止まったか、コレラ菌はどのように人間に合わせて進化したか(一気に増殖してあまり早く殺してしまうと自らを増やせないが、密集した都市では、汚水が上水に混ざり排泄物を経口摂取する機会が増大するから、増殖する方が結果的に子孫を増やせる)というコレラ菌側の「事情と」、当時の医学界を広く覆っていた悪臭原因説がどれだけ患者の救済の妨げになり、真の原因を探り当てるには、曇りなく判断できる知性が、一回のまん延だけでなく、その前から進めてきた準備あってのこと、それも、献身的に地域に尽くしてきた聖職者の協力があったという人間側の状況を時間立てて描いている。当時のロンドンの下層階級の本当にみじめな生活状況も描かれているが、彼らが必ずしもしょっちゅう直ちに感染するわけではないことが、悪臭説への反証の一つとなっていることが、ちょっと、割り切れないような。