ホームシックシアター 春口裕子

ホームシックシアター

ホームシックシアター

病的なまでに肥大した利己・わがまま・自分勝手といったことをテーマにした短編集。表題作は、とてつもない音量であることは読んでいて想像もつき、周りのメモがそのことを指すことも理解できるのに、本人だけが無自覚という、ある種、不気味な存在が制裁される、というところか。「セルフィッシュ」という、そのものずばりの作品もある。ただ、良心のある人はそうした他人を振り回し続けること自体に疲れてしまうのだろう。「小指の代償」は、そうした思い、許すきっかけをつかみたいという一方の心情も描いているのだろう。最後の「おさななじみ」は、ほっとする作品だ。