大砲松 東郷隆

大砲松 (講談社文庫)

大砲松 (講談社文庫)

上野戦争という、ほとんど一部の幕臣の意地だけで起こされた戦に巻き込まれた江戸っ子。彰義隊の武士たちのだらしなさ、それすら参加せず300年のあてがいぶち(とくせん様のお戦を請け負うということで、前払いとして白い飯を食ってきた)を騙し取ったほとんどの旗本八万騎。作者の専門である銃器の扱いはもちろん、立ち小便を逆手にするとか、密偵・捕り方の立ち居振る舞いなどしっかりした考証がリアリティーをもたせる。本当にうまいが、期待したほどの快作ではなかった。宮古沖か、箱館か、いずれ最後は全うできないような主人公だからだろうか。