信州に上医あり 南木佳士

信州に上医あり―若月俊一と佐久病院 (岩波新書)

信州に上医あり―若月俊一と佐久病院 (岩波新書)

理想に燃えつつも現実に立脚して地域医療の中核たる大病院を「アカ」呼ばわりする保守勢力とと極左分子からの双方の攻撃の中、造り上げていった男の評伝。「農民とともに」のスクリーニングが、医師やスタッフにとっては労働強化であることの、当然といえば当然の矛盾を実績とカリスマ性で乗り越えてきた若月だが、貧しい農村の状況を知らない医師たちで占められ、若月なき佐久病院が今後、どのようになっていくのか、あるいはなっていったのか(この評伝は94年に書かれたものだ)、興味はある。