運命の日上・下 デニス・ルヘイン

運命の日 上 (ハヤカワ・ノヴェルズ)

運命の日 上 (ハヤカワ・ノヴェルズ)

運命の日 下 (ハヤカワ・ノヴェルズ)

運命の日 下 (ハヤカワ・ノヴェルズ)

絶賛されるだけのことはある、読み応え十分な大作。第一次大戦ロシア革命という、共産主義への恐怖とテロの跳梁にアメリカ社会の通低音ともいうべき人種問題をからめ、それをベーブ・ルースを登場させて引き込む巧みさ。プロローグの、ワールドシリーズ出場両球団の選手チームが黒人チームに押され、ついにはズルを押し付けて勝利をもぎとる、それは人種問題だけでなく警察官ストライキでの支配側の対応(クーリッジ知事やおそらくフーヴァーによる新聞操作)をも暗示しているのか。主人公の名付け親で父親の親友・エディ・マッケンナのコグリン一家に対する、ひょっとしたら当人も気付いていないかもしれない秘められた憎悪の描き方もいい。