汐のなごり 北重人

汐のなごり

汐のなごり

山形県酒田(小説では水潟)を舞台にした連作集。鶴岡とか鳥海山とか酒井藩とか本間家とか、実名を出しても何ら差し支えないのだろうが、あえて架空の名をつけることで、読者により想像力を広げてもらおうというのだろうか。根底に人間を見つめる優しい視線がある。やはり冒頭の「海上神火」がいちばんよかったように思うが、相場の世界に息詰まる雰囲気を描いた「合百の藤次」もよかった。