見知らぬ場所 ジュンパ・ラヒリ

見知らぬ場所 (新潮クレスト・ブックス)

見知らぬ場所 (新潮クレスト・ブックス)

第一部の短編集は、なかなか世界に入り込めなかったが、第二部の連作集「ヘーマとカウシク」は、続けて一気に読んだせいか、二人の半生を切り取った三つの場面、ヘーマのカウシクへの幼い恋とカウシクの母の死病へのおそれ、カウシクの視点から描いた母の死後の父の再婚と義母の連れ子との関係、そして双方の視点から描いた2人の再会と別れ。泳ぐことを愛したカウシクの母と、泳ぐことをおそれながら海で、インド洋大津波で最期を迎えるカウシク。訳者のあとがきにあるように、時間をあけた三つの場面を手法が、陳腐さを脱する効果を上げているのかもしれない。