壬申の乱 遠山美都男

壬申の乱―天皇誕生の神話と史実 (中公新書)

壬申の乱―天皇誕生の神話と史実 (中公新書)

天智死後の倭姫王の即位、というのは、推古・皇極の例から、大王位継承争いをいったん棚上げにし、いずれ武力行使でライバルを排除して大王位につく、という前提だったそうだ。だから、近江朝廷側もいずれ大海人を武力で排除することは予定にあったはず、とする。卑母であることは、天武朝になってから厳しくなったのであり、この時点では、即位に大きな支障とはならず、大友も大王の有力候補だったとする。近江軍の夜襲の際の合言葉が「金」だったのは、本来「水」だったのを、大海人の「火徳」に敗れ去る運命だったことを強調するために近江朝廷を「金徳」にしたのでは、と。