悼む人 天童荒太

悼む人

悼む人

誰に愛され、誰を愛し、どんなことをして人に感謝されたか。死の現場を訪ねて悼む行為を続ける。実は第7章までは、読むのが辛かった。そのときの感情は、「不快」というものである。悼む人の行為は、年忌の法要を義務的に営んで済ます忘却の日常生活への告発だ。第7章を読んで以降、辛さがなくなったのは、被害者の女性の真の姿が明らかになったからであり、生前の真の姿と一線を引く「悼む」行為には、やはり感情移入できない。正論で押し切られたような、感動させられているような、妙な読後感。