元老西園寺公望 伊藤之雄

元老西園寺公望―古希からの挑戦 (文春新書)

元老西園寺公望―古希からの挑戦 (文春新書)

西園寺公望は、実はしたたかで、方法を変えてでも所期の目的を達成しようとしたり(首相の推薦)、公平な中立者としての元老というイメージの維持のために当初支持していた方針にあえて反対の姿勢を示したりと老獪である。これまでの無気力的イメージは、第二次内閣のときの実力者・原との対立や原の批判が記された日記の公開によってつくられたという。若い女性たちとの私生活と、その混乱によって政治姿勢にも影響が出るあたりも興味深い。何よりも、ベルサイユ講和会議の全権という70歳から、政治的に大きな活躍をしている点を評価すべきなのだろう。