国防婦人会 藤井忠俊

国防婦人会―日の丸とカッポウ着 (岩波新書)

国防婦人会―日の丸とカッポウ着 (岩波新書)

満州事変から日中戦争の初期まで、中国へ出征する兵士たちが多く通過した大阪で、出征兵士たちの見送りと接待(「兵隊ばあさん」)を目的に結成された国防婦人会は、内務省主体で中上流夫人で構成される腰の重い愛国婦人会にあきたらなかった陸軍と、同床異夢的に結合し、発展する。その背景に、見送りは家庭からの一時的な解放であったのだが、陸軍は家庭を守ることを求める(「心の銃」)。そして戦争が拡大して各婦人団体も国婦化し、経済面を担う隣組ができたことで国防婦人会は存在価値を失ってくる。ただ、こうした「銃後」として解放された女性のエネルギーが戦後の活動につながっていると、著者は評しているのだろう。「精動」に組み込まれた活動を「婦人運動家たちは…監視運動が好きなのである」などの表現が愉しい。