中世人の経済感覚 本郷恵子

「成功」の価値が下落していった、というのは『中世公家政権の研究』の時にはわかりにくかったが、要は上級貴族がきちんと任命してくれないから下級官人の約束不履行になってしまいがちで、結局彼等の担保価値になった、ということか。幕府と寺社とで御家人の成功をそれに絞れば御家人がらみの成功価値低下は防げたわけだ。公事に参加する公事が生み出す秩序に連なっているという感覚、それが寺社の場合、宗教的な充足にもつながる、という成功観。また市餅の話は読んだことがあるが、三種獣肉の話は初めてで、市の機能(過去や所有から自由)という見方も新鮮に感じられた。淀の九品念仏を極楽テーマパークとする表現も中世人の感覚を現代にわかりやすく伝えるものとしておもしろい。

中世人の経済感覚 (NHKブックス)

中世人の経済感覚 (NHKブックス)