悪い奴ほど合理的 レイモンド・フィスマン エドワード・ミゲル

悪い奴ほど合理的―腐敗・暴力・貧困の経済学

悪い奴ほど合理的―腐敗・暴力・貧困の経済学

▽コネや腐敗の度合は、証言では測定できない。インドネシアスハルト大統領の健康悪化が流れると、息子が経営に関与している会社の株価は下がり、そうでもない会社は変わらない(むしろ上がる)ことから計測する。▽高い関税率が密輸をはびこらせ、賄賂を受け取る官僚側があえて高止まりさせるケースも。▽腐敗ぶりは文化風土に影響することが、各国の国連外交官のニューヨークでの駐車違反状況からわかる。アメリカへの反発が国そのものの腐敗傾向とは別の要因ともなるし、自国への誇りも影響している。▽水不足は内戦を引き起こす。魔女狩りも引き起こす。「紛争予防緊急支援(RCPS)」と著者たちが呼んでいる、保険による予防対応の重要性。破滅的な状況になってから援助をするよりも、よほど「経済的」である。▽日本そしてベトナムは、国土が壊滅的であっても国民の一体感、行政機構の継続性、そして本当かどうか程度はわからないが公正な行政が、経済成長を後押しし、アフリカ諸国はそれに失敗している。ソマリアの例からは、民族的一体性は、必ずしも安定につながらないこともある。一筋縄でいかない問題だが、経済学が、合理的に、世界の貧困問題の解決の一助となってほしいというのが読後感。