民主化のパラドックス 本名純

スハルト独裁からハビビ、ワヒド、メガワティと移行期、そして2回の直接選挙で選ばれたユドヨノの3期にわたり、民主化の過程とその裏側にあるものを描き出す。「安定」とは、「問題の温存」とコインの裏表であること、与党化した政治家が次々に汚職にまみれ、軍や警察は暴力をアウトソーシングする。ゴルカルについて、党首交代を叙述する際、「時の政権が提供する政治経済的資源への特権的なアクセス」を「心臓」にたとえ、「心臓の働きをしないリーダーには誰もついてこない」とは、インドネシアの組織論として、かなり汎用性があるのではないか。