秩禄処分 落合弘樹

秩禄処分―明治維新と武士のリストラ (中公新書)

秩禄処分―明治維新と武士のリストラ (中公新書)

武士という身分はどうやって解体していったのか。明治維新で財政上問題となっていた「禄」を大きな武力抵抗もなく廃止できたのはなぜか。もともと家禄は私有財産との意識が武士自身にも薄く(ヨーロッパの貴族のような領主権はなかった。切米取りは当然、地方知行制であっても、課税権であり、土地そのものは農民のもの)、徴兵制で職分もなく、それでいて公に尽くそうという意識はあるという点からであろう、とわかった。もともと江戸時代から窮乏で「借り上げ」のうえに維新後の藩政改革でどんどん家禄を削減され(上に薄く下に厚いとはいえ)、ついに公債に。それも米価が高騰したことで目減り。松方デフレ下、政府の意向に従わず金利生活を選んだほうが安定していたというのは皮肉だが、失敗に終わったとはいえ、数々の開拓は今日のベンチャービジネスとしての役割は果たしたであろうというのは、なるほど。武士の商法とはいうが、激動の時代、農工商いずれも失敗のおそれはあったわけで。