2004-01-01から1年間の記事一覧

学生時代の友人・法律事務所勤務と大学教師と3人で、代々木の「ひつじや」へ。法律事務所勤務とは年に何回か会っていて、その前は7月、大久保の延辺料理の店・「千里香」だったが、大学教師の方とは3年ぶりくらい(百人町の韓国風魚料理店・「東海魚市場…

嫉妬の世界史 山内昌之

知られている歴史上のいわゆる英雄のほかに、森鷗外に多くページが割かれた。鷗外の嫉妬深さ、官僚としての挫折を文学作品や山県への接近で晴らそうとするあたり、また牧野富太郎も同様のことをしたあたり、中谷宇吉郎のはなしなど。石原莞爾と東条英機の話…

ふたり道三1、2、3、4 宮本昌孝 

斎藤道三が二人いた、というのがどのような事実か不勉強でよく知らないが、キャラクター設定などよくできているか。ただ、刀を葬るためだけに裏青江衆という集団が作られたこと(さすがに後半は出てこなくなったが)、刀の魔力などは今ひとつか。また戦国の…

山背の里から 熊谷達也

東北・マタギがこれまで日本人が忘れていた縄文的ナマの生き物との関わり方を示している、という宣言か。山背の里から―杜の都でひとり言作者: 熊谷達也出版社/メーカー: 小学館クリエイティブ発売日: 2004/10メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブ…

終りみだれぬ 東郷隆

「絵師合戦」流人で頼朝の挙兵に参加、右筆として仕えた絵師・藤原邦通、「開眼」運慶と快慶、「鼓」壱岐判官平知康と兄四郎、「熊谷往生」。「開眼」が一番か。回想仕立てにしない方がいいようにも。「熊谷往生」は、直実の前半生が参考になったが、ちょっ…

100歳の美しい脳 デヴィド・スノウドン

「ナン・スタディ」が、同じ生活条件で比較できるという痴呆研究だが、同じ環境で一方は症状が出て、一方は脳の状況は進行していても症状は出ず、また脳に損傷が出ないという事態。20歳の頃に書かれた自伝から「意味密度」「感情」を分析し、食べ物は野菜…

太平記「読み」の時代 若尾政希

「読み」が君恩や親子まで功利的にとらえること、宗教に関しては軍事力の保持や国家護持意識の批判、呪術性の否定など戦国期大名の要請を反映している。一方、忠義の対象を「国」と「君」とに分けているあたりは、国家法人説に通じるものを感じた。山鹿素行…

室町花伝 安部竜太郎

「知謀の淵」はやはり後味は悪い。「理尽鈔」では兵法のあるべき姿として称えられているそうだが(「戦場の精神史」)あまりに卑怯だと。一番よかったのは「バサラ将軍」。三条局が自ら後円融院に義満との密通を告げた(小説では直前でなかったことになるが…

太平記〈よみ〉の可能性 兵藤裕己

「読み」が君恩や親子まで功利的にとらえること、宗教に関しては軍事力の保持や国家護持意識の批判、呪術性の否定など戦国期大名の要請を反映している。一方、忠義の対象を「国」と「君」とに分けているあたりは、国家法人説に通じるものを感じた。山鹿素行…

シナン 上・下 夢枕獏

後書きで「「ひと晩で楽しんでください」とあるように一気に読めた(二日かかったけど)。全く知らなかった人物について、興味をもって引っ張る。神の名についての冒頭の神父ヨーゼフとの会話は、『陰陽師』の「呪」の考え方と同じだが、小説全体を貫くテー…

謎とき日本合戦史 鈴木眞哉

日本では白兵主義が伝統だった、という誤った常識は、どこから生まれたかを考察。源平は当然弓矢。刀傷の表現は実は軍記でも少ない。元寇、南北朝も軍忠状から圧倒的に矢傷。戦国時代も同様だが刀創傷が増える傾向。槍の登場と、首取りの影響。それが江戸の…

歴史のなかの米と肉 原田信男

日本は、米への価値観が非常に高まったことと反比例して肉への穢れ感が高まった。田の神が怒るから。稲作時期の肉食禁止、というところからスタート。武士は発生当初は狩猟者だったが、社会の支配者となり、米価値観に。米への価値が乏しかった北海道と沖縄…

摂関政治と王朝文化 加藤友康・編

▽「武門の形成」は、天慶の乱が貴族社会に深く記憶されたことに伴い、参加した清和源氏、貞盛流、秀郷流が武士のイエとなったこと、氏文読みも天皇出自とそのころの先祖から始まる。▽「王朝の仏教と文化」源信は初期メンバーだった「二十五三昧会」の過去帳…

第三の時効 横山秀夫

表題作が最高。いったん読者を驚かせておいて、さらに落とす。いったん驚いて安心しているところだからさらに効果的。心理面を描いたものとしては「囚人のジレンマ」。「モノクロームの反転」は、「トリック」?に寄りかかり過ぎか。「ペルソナの微笑」は、…

クライマーズ・ハイ 横山秀夫

地方新聞社の「もらい事故」に対する意識や退嬰ぶりなど、本来の雑観の落としや連載の第2社会面、特ダネ見送りなどと合わせて後味が悪い感じ。最後で救っているが。「下りるために登る」言葉の趣旨としては、真剣に上ろうと努めなければ下りる資格もできな…

戦場の精神史 佐伯真一

武士は名誉を重んじるが戦場での名誉は勝利や力、一般社会での名誉は公正や信義。平和な社会の価値基準を中世武士にも当てはめたことが混乱。以下、時代ごとに。▽古代。だまし討ちはけものに対しては当然。蝦夷も。戦争は狩りとスポーツの間を動く。▽村岡五…

荒蝦夷 熊谷達也

熊狩りや山羊狩り、子供まで殺すなどの蝦夷の風俗で呰麻呂の残虐さを描いているのはリアリティがあるとして、催眠術で母礼に操られた阿弖流為といい、何の魅力も見せずに死ぬ綺羅といい、どうにも愚作、といって悪ければ凡作、という感じ。呰麻呂に共感でき…

裸者と裸者 上・下 打海文三

上は主に茨城県を中心とした内戦の話。下はほとんど多摩市を舞台としたゲリラ戦の話。茨城は土地カンがあるので読みやすかったが、馴染みのない人は少し大変かも。どちらもすごく応援したくなる、共感したくなる。登場人物の善玉悪玉がかなりはっきりしてい…

源義経 五味文彦

▽常磐は保元の乱の後のことを考えて逃げたが、関東のならいとは違い平氏は女子供まではまでは殺さず常磐も大和宇陀から出てきた。▽義経は義仲を滅ぼした後京都近国の行政鳥瞰的な役割だった。それを1184年3月、中原久経・近藤国平らに権限を奪われた。▽…

外法と愛法の中世 田中貴子

宇治の宝蔵の話以外はなかなか難解。源氏物語の雲隠巻六帖など、存在して欲しいけど存在していないものが宇治の宝蔵に秘蔵されているから、とされる。後は酒呑童子の首とか。氏の長者の検分「宇治入り」が摂関家が衰えた忠実から。頼通が宝蔵に執着して龍に…

言論統制 佐藤卓己

情報官として、言論統制に辣腕をふるった鈴木庫三が実は貧窮から超人的な努力で倫理や哲学の大学教官なみの教養を積み重ねた男であったこと、そのことを編集者達は知らなかったのではないか、とのこと。ハビトゥスの差から鈴木は編集者達を弱者とは思わなか…

中世神話 山本ひろ子

外宮の豊受大神が御饌の神から、天御中主神(隠退神)とのつながり「豊葦原中国」との「豊」の通字で内宮との優位にもっていこうという動き。国生み神話ではイザナギ・イザナミが天空に八坂瓊曲玉を捧げて生まれた。国生みでは、天瓊矛が独股杵のイメージ。…

王朝史の軌跡 角田文衛

藤原基成が信頼の兄でそこそこ貴人であることは知っていたが、陸奥守が当時は基本的に遙任ではなかったこと、基衡相手に硬骨漢ぶりを発揮した人物と交換(用語があったが忘れた)したことは初めて知った。また村上元三や司馬遼太郎の小説で悪役のように、小…

京・鎌倉の王権 五味文彦・編

▽鎌倉幕府は東国国家か、軍事権門か。幕府成立時期を、頼朝の根拠地が固まった1180、東国支配を公認させた寿永宣旨を獲得した1183かをとるのは東国国家。守護地頭設置の文治勅許を獲得した1185か右大将の1190か征夷大将軍の1192をとるの…

中世公家と地下官人 中原俊章

▽衛府が供御を貢進する行為は呪術的な意味が含まれ、検非違使の警衛も、滝口も。衛府が内裏の清掃を担当するのも。検非違使が河原などの興行を仕切るのも、穢れとの関わり。それが坂など交通の要衝を押さえることにもつながり経済的な意味を持つ。▽地下官人…

王朝の権力と表象 服部早苗・編

▽過差は、天地の秩序を乱すことで王としては制御しなければならず、摂関も廷臣としては協力しなければならないが、逸脱の欲望が本質、左右に揺れる。逆に過差を認めることが権力者。▽馬は摂関家が押さえ、貴族社会への供給源ともなっていた。競馬は院に止め…

院政の展開と内乱 元木泰雄・編

地域の対立紛争の調停者として登場した京武者もやがて在地領主と対立するようになり、さらに上位の棟梁の登場、反りがある刀は必ずしも馬上戦闘から出たのではなく、馬は弓、刀は歩卒の武器だったこと、矛は集団的で長刀は個人的で律令の矛と中世の長刀、中…

酒呑童子の誕生 高橋昌明

大江山の位置が西北・山陰道で疱瘡の通り道、疱瘡は新羅から、蕃と征夷から住吉の連想、雷光と頼光、方相氏と保昌の音通の連想、斉天大聖の中国読み「チーティエンダーション」、中国小説に源流を求め、四神との関わりから説話の誕生に関わった比叡山・渡辺…

連立政権 草野厚

連立政権になることで、各党が無責任な態度を捨て、政策過程が透明になり、市民の活動などに理解が示されるようになった、とかなり好意的な見方である。対立軸が不明確、ということは指摘しているが。国連への関与などでわかれた上、大きな政府・小さな政府…

中世に生きる律令 早川庄八

「比附」「因准」「挙軽明重」「挙重明軽」「所為重者自従重」を駆使して、律令の条文を変えずに自在の解釈を行う(本来の用語の趣旨をあえて無視して)。その鎌倉期の寛元二年の石清水八幡宮の事件についての部分が長大。貴族社会が影響を失い律令がもはや…